なんでもかんでも。

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お久しぶりです。
今朝のワールドカップでドイツが優勝したので、ドイツ推しの村田の出番だと思い舞い降りてきましたよ~!よかったね!私自身はアルゼンチン応援してたけど、よかったね!(笑)
大学生設定で小話です^^
「そう…そのまま、あとちょっと!」
前のめりでテレビに食らいつく村田。待ちに待ったホイッスルの音が聞こえると、テレビの向こうの選手やサポーターと同じ様に破顔した。おれはと言うと、隣のサッカー大好きメガネくんと一緒になって白熱しつつも、その表情を見逃さない様に何度も村田の顔を見てしまっていた。
「やった!!やったー!!!」
「優勝おめでとー!」
村田がドイツ推しなのには理由がいくつかあるのも知っているけれど、単純にサッカーの強豪国として好きなのもある。おれはサッカーは専門外だが、ワールドカップくらいは観ておいて損は無いだろうというのが持論だ。そもそも嫌いな訳でも無い。スポーツは好きだ。まぁ一番は野球だけどさ。
もし親父がおれにサッカーの楽しさを教えていたとしたら。それはそれでまた違う人生になったのかもしれない。コンラッドとあんなに打ち解ける事も出来ず、おれは魔王にならなかったのかもしれない。もしくは、もっとチャラいサッカー少年になっていたのかも。まぁ、そんなわけないけどさ。
「ドイツが勝った!ばんざーい!しーぶやー!」
「うぇーい!」
求められるがままにハイタッチをしてハグをする。さながらここはドイツのサポーター席か。実際にはおれ達の下宿先で、床はフローリング、いつものソファ。ユニフォームは村田はドイツ、おれはライオンズとチグハグもいいところ。
それでも眠い目を擦りながら村田に付き合い決勝戦を観る事を快諾したのは、いつも村田が同じ様におれに付き合ってくれているから。
好きなヤツが満面の笑みを浮かべて喜んでいるのを見るのが嫌な人なんていないと思うんだよね。
だから是非とも、勝っていただきたかったわけでして。
「よかったなー!」
「ね、よかったねー!ホント嬉しいよ!」
首に抱き付いていた村田が体を離すと、頬にキスをしてきた。驚いて目を見開くと目の前の唇がニッと笑う。
目を見ると、それも同じ様に悪戯な色をしていた。
「渋谷、一緒に観てくれてありがとう」
「…おれも観たかったから」
今のチューは何だったんだよ、と視線だけで聞いてみたけど村田はブルブルと震える携帯に手を伸ばしてしまった。
そして本日何度目かの嬉しそうな笑みを浮かべると、通話ボタンを押して話し出した。言語は…英語だ。
「Hey! I received your email just now!」
みたいな事を言いながら楽しそうに話す相手が誰だか察しはついている。村田にはおれより沢山の記憶があるから沢山の知り合いも居るから当り前だけど、ペラペラと英語を話す村田がちょっと遠くに感じてしまう。
ああ、そうだったってちょっとだけ思い知らされるんだ。
でもまぁ、物理的な距離はおれが一番なわけでして。
「That's right…っ!」
無防備に笑う村田のうなじにキスをしてやると、その背はびくっと震えた。ほら見ろ、村田だってそこ、弱いじゃん。
振り向いた顔にニヤリと笑ってみせると、そのまま立ちあがってキッチンに行こうとする。すると村田が電話の向こうにとびきり嬉しそうに何か呟いた。
おれは英語が得意では無いが、それは明らかに…「ボーイフレンド」と聞こえた。え?と目で返すと村田は二言、三言続けてから電話を切る。
あれ、お前何言ったの?今のあれだろ?仲良しのお医者さんだろ?
おれの気持ちが伝わったのか、村田は小悪魔的笑みを浮かべて口を開く。
「今ね、ジョゼに『彼氏が構ってくれって言うからごめんね』って言ったんだよ」
「ちょ、それって」
「大丈夫、ジョゼにはもう報告済みだから!」
「…そーかよ」
先回りの告白に呆れ顔で返すと、村田は殊更嬉しそうに『じゃあ、今から構うね?』とおれの頬に手を添えた。
全くそういうつもりじゃないんだけど、と思ったけれど、これはこれで万事オッケーな気もして、おれは大人しく目を瞑ったのであった。
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