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なんでもかんでも。



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久々に小話でも!
バレンタインだったので…すぎちゃったけど…笑
短いです。



渋谷有利、バレンタインデーの晩に帰宅早々吐瀉るなう。


「はー、こりゃお腹の風邪だね」
触診で病気の判断ができる恋人がいてよかった、と心から思ったのも束の間、強烈な吐き気に襲われて側にバケツを掴む。トイレに行くのも一苦労な程に体が痛い。インフルエンザかと思ったがそれはどうやら違ったらしい。ひとしきり出し終えて水分を取る、その動作も苦しい程に衰弱していた。
「珍しいね腸炎だなんて。明日病院に行くとして、今日は沢山水を飲んでどんどん出してね」
「むらたぁ、くるしい」
「お腹の中の菌が出ちゃえば治ってくるから。お粥作ってくるね」
ぽんぽんと額を撫でられて緩みそうになる瞼にキスをされた。まるで小さい子をあやすみたいな仕草に、村田の背後に医者の姿を見た気がした。癒しの衛生兵とはまたちょっと違う、白衣の誰か。
「むらたせんせい…」
ぼそ、と口の中で呟いたつもりが漏れていたらしく、村田が楽しそうに肩を揺らすのが解った。
温かいリビングのソファベッドに寝ているので、村田の姿はここからでも見える。無理矢理買って来て一時喧嘩にもなったが、こういう時には心強い味方でもあり。部屋で寂しく待つよりもずっとずっと安心するのは、同じ空間に人がいるから。
「僕の記憶の中にお医者がいて良かったよ。男だったんだけどね、インディジョーンズみたいな冒険も辞さない人だったんだよ」
かつおぶしのパックを開ける音、しょうがをする音。卵を割って、溶く音。村田の小さな昔話。そういうのが好きだ。女子とは違うけれど、母親みたいで、尊敬もできる。
「さて、お粥ができたよ。僕も今日はこれにするから一緒に食べよ」
村田の作ってくれたお粥とホットココア。食べ合わせが悪そうだけどお腹に優しいから、と村田は肩をすくめた。そっか、今日はバレンタインだ。
「明日は会社休むんだよ、解った?」
「うん、ありがと」
素直になれるのはきっと風邪のせい。
お粥を口に運んでうまい、と呟いたら村田が満足そうに微笑むのが視界の隅に映った。


ああ、この風邪が治ったらおれ、真っ先にお前にチョコをあげたい。






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