なんでもかんでも。

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小惑星探査機「はやぶさ」が6/13午後11時頃に地球に帰ってくるという話。
地味に楽しみです。ニコニコで中継見るんだ^^
このはやぶさ、関連曲や、関連MADなどが多数作られてて泣ける。
擬人化はやばいと思うんですよ。
以下、勝手に妄想。
『ねぇ、僕の声、聞こえる?』
聞こえる、聞こえるよ。きみとぼくは、ずっと一緒だったから。そう言うと、きみはそっとぼくの頭を撫でる。
片目に無造作に巻かれた包帯から、ふたつめの瞳は見えない。だけどなんだか、微笑んでる気がした。
『随分長い間、僕達一緒だったね。だからまっくらな宇宙でも、さみしくなかったよ』
動かなくなった片腕も、無くす事も出来ないまま肩についている。もう二度と動く事のない腕なら、いっそ切り離してしまえばいいなんて思った。
だけど、置いていくにはかわいそうだよ、そう、きみは言った。ぼくはそれを、ちゃんと覚えている。
『ここまで色んな事があった気がする、本当に、数えきれないくらいのつらいことも、かなしいことも。でも、たのしかったことしか、覚えてないや。それはきっと、きみがいたからだ』
繋いだてのひらが、ぎゅっと握りこまれた。胸に耳を寄せれば鼓動の音が、どくんどくんと鳴る。
傷だらけのきみの心臓は、まだ、動いている。
『こないだ、あかつきが、僕のところにきてくれた時に言ってたんだ。ありがとうって。みんなが言ってたって』
ぼくをそっと引き寄せると、きみが笑った。出発した時に見せていたような、明るくて、きれいな笑顔。
『僕は使命を果たすためだけに産まれてきたから、出来て当然でないといけないのに…不思議だね、どうして当たり前の事をしている僕に、ありがとうって、言うんだろう』
でも、嬉しかったんだよね。そう言うときみは、照れくさそうに、笑った。
『僕ときみを作ってくれた、あのひとも喜んでくれてたらいいな。ずっと一緒に旅を続けられたのも、あのひとのお陰だから』
そうだね。ぼくもそう思うよ。あのひとが喜んでくれたら、ぼくも、凄く嬉しい。
『もうあんまり、僕はおかしくなってしまったから、よく思い出せないけど、僕はきっと、ずっと、きみと一緒にいたかったんだと思う。だからあの時、地球と連絡が取れなくなった時に、少しだけこのままでも良いかと、思ったんだ』
それはずっと、解ってた。きみが記憶をなくしてしまったから、覚えてはいないだろうけれど、きみはたしかに片目を失ったときにこう言った。このままぼくらうちゅうでえいえんにふたりぼっちをしようか。
だけどきみは、ぼくがうん、とうなずくまえに涙を流して、残ったからだで帰ることを選んでいた。
そういうのも、ぼくは今も全部、覚えている。
『ごめんねぇ』
どこか遠くを見つめて、きみは言った。独り言みたいに呟いてから、ぼくの手をまた、ぎゅっとする。
『僕、言ったっけ。きみのこと、好きだったと』
言わなくても、ちゃんと知ってるよ。ぼくも、きみのことを、好きだよ。
『言わなくちゃいけないって、思ってたんだ。ありがとうって』
きみの目がぼくをじっと見つめて、さみしそうにそれが揺らいだ。きみが殆ど動けなくなっても、そんな悲しい顔は見た事無かったのに。
『地球がもう、目の前なのに。嬉しいのに、なんだか、すごく切ないんだ。それはきっと、きみと離れてしまうからだと、思う』
ぼくも悲しくなって、頬を擦り寄せた。あたたかいぬくもりを感じると、身をそっとゆだねる。
抱きしめることができなくて、ごめんね。
『僕は一緒にいけないけれど、きみが僕のこと、覚えててくれたらいいな。すこしぐらい、わがまま言ってもいいかな』
いいよ。わがままなんかじゃなくても、きみのこと、忘れない。だからきみも、、きみ、、、も。
『もう時間だね。ありがとう。僕と一緒にいてくれて。どうか、無事で、いてね』
ぼくも、ありがとう。全部、全部、きみがいなければ、できなかった。
小さく、光る星を背景に口づけると、きみはそっと、手を離した。
『さよなら』
「さよなら、はやぶさ」
そして僕は、地球へとおちていった。
『…ありがとう』
遠ざかるその姿が、微かに泣いているように見えたけど、もう、そばに行く事は出来なかった。
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